ジェネレーティブ デザイン

ジェネレーティブデザインを使用してレストランのレイアウトを作成する方法について学習します。

ジェネレーティブデザインとは

Revitのジェネレーティブデザインでは、Dynamo のグラフを利用して、設計のソリューションを成果ベースで検討することができます。設計上の問題に合わせて基準と拘束を定義すると、 ジェネレーティブデザインは、その情報から考えられるソリューションを反復して成果をすべて提示し、さらに詳細に評価できるようにします。最適なソリューションが決まったら、ボタンをクリックだけで、そのソリューションをモデルに統合してさらに開発を進めることができます。

ジェネレーティブ デザインの利点

ジェネレーティブ デザインでは、設計上の問題に対して考えられるソリューションを、他の手段よりも数多く検討することができます。ジェネレーティブ デザイン スタディを実行するのは Dynamo グラフであり、設計基準を統合して代替案を生成するためのロジックを提供します。Dynamo グラフはそれぞれ、設計上の特定の問題に対処します。Revit には、サンプルのスタディ タイプ(グラフ)がいくつか用意されています。自分でグラフを作成して、独自の設計上の課題に対処することもできます。

ジェネレーティブデザイン ツールを使用すると、Dynamo のビジュアル プログラミング環境を使用しなくても簡単に設計基準を入力できます。またこのツールは、ジェネレーティブ デザイン スタディの反復を自動で行うため、ユーザは ジェネレーティブデザインをバックグラウンドで実行しながらモデルの他の領域に注力することができます。反復が完了したら、提示されたソリューションを確認します。これにより、設計上の特定の問題に対する多くの可能性を検討するための時間を短縮できます。

ツールのある場所

ジェネレーティブデザイン ツールは次の場所にあります。
  • [管理]タブ [ジェネレーティブ デザイン]パネル
    • スタディを作成
    • 成果を検討
注: これらのリボン ツールを使用して Revitのジェネレーティブデザインに直接アクセスできるのは、Autodesk Architecture, Engineering & Construction (AEC) Collection のサブスクリプション メンバー、またはエンタープライズ ビジネス アカウントを所有するユーザのみです。どちらも持っていない場合でも、Dynamo for Revit から同様の機能を実行することができます。ただし、 ジェネレーティブデザイン のユーザはRevit LTを使用できません。

[スタディを作成]を使用してスタディ タイプを選択し、目標とスタディ基準を定義します。次に、ボタンをクリックしてスタディを開始し、設計の代替案を生成します。プロセスの実行中は、モデルで別の作業を続けることができます。

プロセスが完了したら、[成果を検討]ダイアログを使用して設計の代替案を検討します。特定の基準で成果にフィルタを適用すると、可能性のある選択肢を絞り込むことができます。最適なソリューションを選択し、ボタンをクリックしてモデルに統合します。ビデオなどの詳細については、「ジェネレーティブ デザイン」を参照してください。

ケース スタディ: レストランのレイアウト

ジェネレーティブ デザインを使用して設計上の問題を解決する方法の例として、レストランのレイアウトを考えます。

このレストランには、さまざまなサイズのテーブルと 98 席の座席があり、さらにバー エリアもあります。既存のレイアウトでは多くのテーブルが互いに近接しています。

既存のレストランの平面図

この小規模なレストランは、物理的な距離を確保するためのガイドラインに基づいてレイアウトを設計し直す必要があります。現在、このレストランのダイニング エリアでは、適切な距離が確保されていません。そこで、ジェネレーティブ デザインの手法を使用して、ガイドラインに準拠するようにレストランのレイアウトを検討します。

このケース スタディは、MASS Design Group がレストラン用に作成した設計のガイドラインに基づいています。このガイドラインでは、1.8 メートル(6 フィート)の物理的距離を確保するという推奨事項を厳密に順守できない可能性があるレストランなどのスペースに対して、柔軟で繊細なソリューションの必要性を強調しています。ソリューションでは、感染のリスクと持続可能なレストランの経営とのバランスを取る必要があります。

レストランの平面図を再設計し、物理的な距離確保のガイドラインと推奨事項に従って、スペース内で特定の通路エリアを維持した配置にします。レストランの表と裏には屋外のダイニング エリアを追加することができます。 ジェネレーティブデザイン スタディは部屋要素に基づいています。部屋の構成は、メインのダイニング エリア と 2 つの屋外のダイニング エリア です。キッチン および人や物が行き来するスペース は、準備スペースと往来ゾーン専用のガイドラインに従います。

基本的な平面図レイアウト

メインのダイニング スペースには、建物の南側に沿って長い壁があります。ここには宴会用の長椅子を設置し 、1.8 メートル(6 フィート)以上の間隔でテーブルを配置して、必要に応じて大人数のグループも収容できるようにします。宴会用の座席には適さないと思われる北側の壁 には、ブース席を置きます。

壁沿いの座席

メインのダイニング エリアと 2 つの屋外スペースに最適なレイアウトを見つけるために、Revitのジェネレーティブデザインを使用します。[オブジェクトをステップ グリッド状に配置]スタディを使用すると、テーブル数を最大限に増やしながら、座っている利用客の間隔も最大に広げることができます。

ステップ グリッド状のスタディでは、部屋要素と、部屋に配置するファミリ インスタンスを使用します。このケースでは、テーブル、椅子、および物理的距離の要件を示す破線で構成されるネストされたファミリを使用します。X 軸および Y 軸方向の、オブジェクト(テーブル)間の距離の変数を選択します。間隔を設定すると、グリッド、およびファミリの挿入点(基準点)に基づいてファミリ要素の配置が決まります。

このスタディでは部屋にグリッドが表示され、テーブル ファミリがグリッドのオフセット セルに配置されます。テーブル インスタンスの一部が部屋の外に出てしまう場合、そのファミリは削除されます。(この例では、宴会用の長椅子エリアを確保するため、セパレータを使って部屋の境界が再定義されています。) ジェネレーティブデザインは、X 軸および Y 軸方向の間隔を変えて、ステップ グリッド状のレイアウトを繰り返し配置します。また、グリッドの基準点も調整します。グリッド間隔値と基準点が変わると、部屋内の代替配置案とテーブル数もさまざまに変わります。考えられるレイアウトがスタディでどのように反復されるかを視覚的に確認できるよう、 ジェネレーティブデザインによってスペースに表示されるグリッドを次の図に示します。

[成果を検討]ダイアログを使用して、レイアウトの代替案を確認し、さまざまな基準で評価します。

ダイアログの下部にある散布図を使用し、自分で決めた基準を満たす成果を探します。この例では、グリッド間隔は、物理的距離のガイドラインを満たすように、1.6 メートルより大きくする必要があります。値を小さくすると、テーブルの数は多くなりますが、互いに近すぎてガイドラインを満たすことができません。また、間隔を広くするとテーブルの数が減り、レストランの経営持続に必要な数を確保できなくなります。全体的な目標は、テーブル数とテーブル間の物理的距離のバランスを取ることです。

この例では、1.5 メートル未満の値 は間隔が近すぎるため無視します。また、散布図の離れた位置にある成果もテーブルが少なすぎるため無視できます 。次の図では、破線の近くの結果を、考えられるレイアウトのソリューションと考えます。

これらの成果に基づくと、9 卓のテーブルを 2 列に配置することが最適なレイアウトになります。

[成果を検討]ダイアログで最適なレイアウトを選択したら、[Revit 要素を作成]をクリックします。Revit で、モデル内に要素が配置されます。

ジェネレーティブ デザイン ジェネレーティブデザイン

次に、部屋の特定の条件をより適切に満たすようにレイアウトを手動で修正できます。たとえば、南側の列にあるテーブルの間隔をさらに広げ、南の壁に沿った宴会用の長椅子に対してより適切に物理的距離を確保できるようにします 。北側の列は、パティオへのドアの近くにテーブルを追加し 、化粧室および人や物が行き来するスペースにつながる通路スペースを広げる ように調整します。テーブルの両方の列は、レストランの中心を基準としてテーブル間の通路スペースを広げるように調整します

調整されたレイアウト

屋外のダイニング スペースに対しても、 ジェネレーティブデザインで同様の操作を実行します。その結果、レストランの表側には 4 卓、裏側には 3 卓のテーブルがそれぞれ追加され、レストランのキッチンと業務用エリアがより明確に設定されています。テイクアウト注文品の受け取りは、以前はバーだったエリアで行います。レストランの出入口に近いため、レストラン内にいる人との接近を抑えられます。

レイアウトを完成した後、作業効率と安全性を高めるため、[移動経路]ツールを使用して、スペースを通る人の流れを把握します。座っているときの人との接近を最小限に抑えるため、レストラン営業中は、近くに通路が少ないテーブルから先に座ってもらうことを考える必要があります。

新旧のレイアウトを比較すると、新しいスペースには屋内に 81 席、屋外に 28 席の座席が設置されています。元のレイアウトでは、屋内に合計 98 席でした。座席のサイズの多様性や屋内の座席数が多少犠牲になっています。屋外の座席を追加して 4 か月間利用できると仮定しても、再設計後のレストラン全体の収益は約 9% 減少します。

既存のレイアウト

新しいレイアウト